風邪の引き始め用の漢方薬3つとは
風邪のときによく処方される漢方といえば、葛根湯(かっこんとう)、桂枝湯(けいしとう)、麻黄湯(まおうとう)の3つです。この3つはとくに風邪のひき始めに使います。市販薬でも売られているので、気軽に使いやすいですね。ただ少しずつ性格がちがいます。効果的に使うには、その人の状態にあわせていくことが大事です。ここでは使い分けのポイントを解説していきます。
市販で買えるから自分で選べるね。
どうやって選ぶの?
桂枝湯、葛根湯、麻黄湯の使い分け
使い分けの前に
まず風邪の引き始めといっていい症状かどうか確認しましょう。
のどの痛み、鼻水、咳。典型的な風邪ではわずかでも3つの症状がすべてある場合がほとんどです。どれか1つだけの症状しかない場合などは別の病気の時がありますので注意が必要です。
寒気は「これから熱がまだあがるぞ」というサインです。
使い分けポイント
では、ずばり表にまとめます。
桂枝湯 | 葛根湯 | 麻黄湯 | |
---|---|---|---|
汗 | 出ている | 出ていない | 出ていない |
寒気 | 弱い | 中間 | 強い |
発熱 | 微熱まで | 中間 | 高熱まであり |
(元々の体力) | 弱々しい | 体力あり | 体力あり |
基本は、「何となく寒気がする」とか、「熱っぽいみたい」な弱い症状なら桂枝湯、ゾクゾクするような寒気の強い症状なら麻黄湯、中間なら葛根湯です。熱はこれから上がるという場合もあるので熱はまだ高くないけど寒気が強い時は強い症状と考えましょう。
葛根湯と麻黄湯は汗をたくさん出させる薬でもあるので汗が出ていない時に使うのが基本です。
漢方では病気への抵抗力の強い人の方が病気に対して強い反応が出るという考え方もあります。体力があることと、強い症状がでることはだいたい一致していると思っていただいてかまいません。なので、高齢であるとか、どう見ても弱々しい人でなければ、症状で選べばいいかと思います。
あと一つ注意点は、葛根湯、麻黄湯は心臓に負担のかかる生薬が含まれていますので、高齢者や心臓が悪い人には向きません。強い症状かな?と思っても桂枝湯を使いましょう。
汗があるかないか、寒気・発熱などの症状の強さで選ぶよ。
高齢者、心臓の悪い人は桂枝湯が安全なんだね。
余談ですが、麻黄湯はインフルエンザでよく使われる薬でもあります。これはインフルエンザだから麻黄湯ではなくて、インフルエンザで強い症状が出ているから麻黄湯です。インフルエンザと診断されてもたいしたことなくて弱い症状なら桂枝湯を使うのが妥当と言えるでしょう。
いつまで使う?
数日で症状が治まってきたら終了しましょう。
引き始め用の処方だから、だらだら使うのはなし。
使うのは数日から1週間ですね。
どんどん悪化していったり、1週間をめどに症状が軽快してこない時は受診が必要です。また、症状は軽快してきたけれど治りきらず、ぐずぐずしている時は別の漢方の出番です。風邪で使う場合、桂枝湯・葛根湯・麻黄湯はあくまで急性期用の薬です。
よくならない時は病院を受診しよう。
生薬の比較
ここからはマニアック。
必要な人だけ読みましょう。
3つの漢方薬に含まれる生薬を表にまとめてみます。
桂枝湯 | 葛根湯 | 麻黄湯 |
---|---|---|
葛根 | ||
麻黄 | 麻黄 | |
杏仁 | ||
桂皮 | 桂皮 | 桂皮 |
芍薬 | 芍薬 | |
甘草 | 甘草 | 甘草 |
大棗 | 大棗 | |
生姜 | 生姜 |
まず、葛根湯=桂枝湯+葛根+麻黄であることがわかります。これは基本を桂枝湯として、そこに発汗と交感神経刺激の作用をもつ生薬を加えていることで、より強い症状に対応しようというものですね。
麻黄湯はそこから胃腸を調える大棗と生姜を除いています。芍薬は筋緊張を取ると同時に汗が出過ぎるのを止める効果がありますので、これを除くことにより発汗のリミッターがはずれるイメージ。そして、麻黄の効果の増強と咳止め効果を狙って杏仁を加えてより感冒初期にの強い症状に特化したものと解釈出来るのではないでしょうか。
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